「あいつ、幸せそう・・・・・。」
第5話
「カーフィルムをやっていると、コーティングは出来ないのか?と言うお客様が増えてきたんだ。それで始めたんだ。 ネットで優良店を探し見つけたのが栃木県宇都宮市にあるアペックスさん。すぐにメールをして技術講習のお願いをしたんだ・・・。」
当時の事を懐かしむ様に話す社長さんの顔をじっと拓哉はみつめていた。
「最初は八戸ではあまり流行らないのでは・・・?とも思ったが、必要としているオーナー様が沢山いることにビックリしたよ。始めた頃は商品説明もメーカーの作ったパンフレットの内容をそのままただ読んでいると言う感じ、そりゃそうさ、コーティング後の経過がどうなっているか知る由もないからね。」
今日はじめて逢った社長さんなのに、なんかづっと前からの知り合いでもあるかの様な不思議な方だ・・・
拓哉は話を聞きながらそんな事を思っていた。
「でも14年もこの商売をしていろんなものが見えてきた。 ただ儲けたいが為にオーナー様のことも考えず良いですよ、良いですよ、とは言いたくない。お車の保管場所、職場駐車場環境、青空駐車ご自宅周辺の環境等をキチンとお客様から聞きだし、愛車のキレイの維持の為のベストな方法を提案してあげなければいけないと思うんだ。ガラス被膜のコーティングは耐久性も艶も確かに良い、しかし全てのオーナー様に当てはまるかと言うとそれは疑問だ、例えば黒ボディーの車にコーティングしたとしよう。施工後の重量感のある艶にはうっとりする、がしかしオーナー様は青空駐車、忙しく自分で洗車する時間も無い、職場駐車場はご親切にも緑が一杯の松林の中・・・
3ヵ月後・・・艶はやっぱりすばらしい!が洗車キズ(GSスタッフによる手洗いらしい?)・樹液付着・雨染み・・・
コーティングの威力だけではどうしようもない部分がある、仮にこんな状態になったら即ご自分で何らかの処置ができるのであればいいのだが・・・・言いたいのはコーティングしても手入れをしっかりやっていかないとキレイの維持は無理だという事です。ガラス系コーティングをして塗装は保護されてはいるが皮膜上に次から次と汚れをためていったらもちろん美観は損なわれます、水の切れもさっぱりおかしな状態に・・・いざ洗車をしても落ちない汚れで大変、染みもはっきり目立ってくるんだ。」
社長さん、コーティングのこと話出したら止まらなくなった。
真剣に取り組んでいるんだなーと拓哉は心の中でつぶやく・・・
でもどうなんだろう、社長さんのこんな話聞いたら高いお金出してコーティングなんかやらない方がいいのではと思ってしまうんじゃないか・・・拓哉は少し心配になった。
「私は思うんだ。特に黒ボディー車。保管場所がしっかりしているオーナー様には自信を持ってお勧めできるガラス被膜コーティングGT-C。でも環境の悪い青空駐車、特に北国降雪地帯、まして洗車に自信がないオーナー様はキレイの維持には1年に1度のリフレッシュ(磨き・コーティング)を絶対お勧めする。ガラス被膜でなくていいんだ、親水、撥水・・・あまり気にする事ないと思うよ・・染みがない、洗車キズがない、1年間はフッ素コーティングで塗装をガード出来ている、これで黒ボディーの美観は保てると思う・・・・ただ毎年愛車のキレイにどれだけ予算を取れるかも問題になってくる・・・なんとかお金をかけないで愛車のキレイを維持できる方法はないものか・・・・・?
例えば市販のコーティング剤を自分で塗るオーナー様、下地作りいわゆるポリッシャーを使っての磨き作業のみをしてあげる・・・コーティング後の染み取り磨きのみをしてあげる・・・まだまだ考えると我々がしてやれるいろんな事があると思う・・・私はこの商売をしていて良かったと思うのは、オーナー様の愛車がキレイに蘇り喜んでもらった時に自分の使命?を果たせてよかった、喜んでもらって良かった・・・と思える瞬間なんだ。これからも、もっと良い商品を発掘していき、愛車のキレイの維持にお手伝いできる様やっていきたい。青森県にもこんなお店を必要としているオーナー様がいる限り、そして自分が選んだ一生涯の仕事として、お客様のお車をキレイにするだけじゃなく、そのキレイを維持するのが自分の使命と捉えもっともっと良い仕事をしていきたいんだ。 ちょっと失礼。」
電話の呼び出しベルが4回なり続けて社長は席を離れた。社長の話をされる迫力に身動き一つ取らずに聞いていた拓哉は勇気をもらっていた。
「・・はい、青森市からですか・・・わざわざ遠い所申し訳ございません。へこみの位置は・・運転席側ドアですね?・・・。」
デントリペアの依頼らしい・・・青森市からも来るんだ・・・
拓哉は社長さんとお客様の電話のやり取りに耳を傾けていた。
外はすっかり暗くなっていた。
帰宅ラッシュの車の列、外灯に照らされ眩しく輝く1台のハリアー、こっちを向いてにっこり笑った、ボディーが微笑んでいる。
カラーコード202の黒。
「あいつ、幸せそう・・・・・。」
拓哉は呟いた。
つづく・・・
この物語は本当はノンフィクションであればいいのにな・・・・
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